既存住宅の流通

今回は住宅の長寿命化と密接な関係を持つ既存(中古)住宅の流通量の現状について考えていきたい。

住宅の長寿命化のためには既存住宅の流通量の拡大が不可欠である。なぜなら住宅の耐用年数が長くなればなるほど当初の所有者が管理できる期間を超えてしまうため、流通できない場合は空き家になってしまうからである。逆に既存住宅の流通量が増えれば、既存住宅を高く売るために維持補修が丁寧に行われ、結果的に経済的耐用年数が延びて住宅の長寿命化が実現する可能性が高い。つまり住宅の長寿命化を促進するためには住宅そのものの寿命に着目するだけでは不十分であり、既存住宅の流通量を増やす努力と政策が求められる。

では実際に日本の既存住宅の流通量はどのような状況なのだろうか。日本における既存住宅の流通量を把握したい場合、一般的には国交省の住宅・土地統計調査による「既存住宅取得数」が用いられる。しかし5年毎の調査であるため各年の推移が把握できないことに加え、法人による売買が含まれないこと、居住している住宅の実態調査のためセカンドハウスとしての利用や購入後に建て替えを行う住宅が比較的多いことを踏まえると、その値を既存住宅の流通量としては利用できない。そのため法務省の登記統計による「所有権移転個数」を基に(社)不動産流通経営協会が推計した既存住宅流通量(文献1)から既存住宅の実態を見ていきたい。

全国の既存住宅流通量(住宅着工総数)は1998年には34.4万戸(119.8万戸)であったが、2006年には52.0万戸(129.0万戸)と着実に増加している。また既存住宅流通量と住宅着工総数を合計した全住宅流通量に対する既存住宅流通量の割合も1998年の22.3%から2006年の28.7%と増加傾向を示している※1。近年の既存住宅の流通量は新築住宅の半数近くを占めているため、現状の既存住宅流通量でも十分だと感じられるかもしれない。しかし米国における既存住宅の流通量の実態と比較すると、日本の既存住宅の流通量の割合はとても少ないことが明らかになる。

米国のNAR(National Association of Realtors :全米不動産協会)の推計値によると、全米の新築住宅販売戸数は1998年には88.6万戸、2006年には105.1万戸と、日本の新築住宅の流通量よりやや少ない程度だと考えられる。しかし既存住宅販売戸数は1998年には496.6万戸、2006年には647.8万戸と日本の10倍以上の流通量がある。なお既存住宅販売戸数と新築住宅販売戸を合計した全住宅販売量に対する既存住宅販売量の割合も1998年の84.9%から2006年の86.0%と、日本の2006年の既存住宅流通量と比べても3倍程度の開きが見られる。また2006年の日本の人口は1億2770万人、米国は2億9900万人であることを考えると、米国における人口当りの全住宅流通量の割合は日本の2倍近くあるが、新築住宅流通量の割合は逆に日本が米国の3倍近くある。今日の米国の住宅事情、例えばサブプライムローンの破綻による住宅市場の低迷と社会に与えた影響を考慮すれば、無条件で米国を標準だと考えるのは問題がある。しかし日本の住宅市場が新築住宅に依存していること、また新築住宅の流通量が現在よりも減少しても既存住宅の流通量増加による住宅市場の活性化が十分可能なことは、米国を見れば明らかである。

米国における住宅の状況については改めて分析を行うが、これだけ大量の既存住宅が流通している背景には、日本に比べて住宅の維持補修が適切に行われ、長寿命化を実現する「仕組」が住宅市場で機能している状況がある。もちろん既存住宅の流通量が新築住宅に比べて多い傾向は、米国だけではなくイギリスやドイツなど欧米諸国でも見られるため、決して特殊な傾向ではない。景気も人口も減少傾向にある日本の住宅市場は「仕組」の転換を迫られつつあるが、まずは米国など欧米諸国における住宅市場の実態を参考に既存住宅の流通と市場の拡大に向けた対策を打つ必要があるだろう。

※1 ちなみに住宅・土地統計調査の既存住宅取得数は、1998年には11.6万戸、2003年には17.5万戸と、既存住宅流通量の推計値の1/3程度である

<参考文献>
1.「FRK既存住宅流通指標および市場で流通しうる住宅ストック量の推計」不動産流通経営協会 http://www.homenavi.or.jp/frk/about/data/kaiho91/topics2.htm
2.「既存住宅流通活性化プロジェクト 既存住宅再考」リクルート住宅総研 http://www.jresearch.net/house/jresearch/kizon/pdf/kizon08_all.pdf
3.「既存住宅流通市場を俯瞰する」小沢理市郎/Best Value/Vol.17/2008 http://www.vmi.co.jp/pdf/bv/bv19/bv19_01.pdf

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