最近の住宅の平均寿命

今回は固定資産台帳の調査結果を用いた最新の研究結果(文献1)を基に、日本の住宅に関する近年の平均寿命とその傾向について考察していきたい。

この研究では総務省の協力により全国の県庁所在地を中心とした都市を対象に固定資産家屋台帳の調査を行った結果、2005年における全国の専用住宅(戸建住宅)の平均寿命は観測値で58.45年、回帰式で53.89年と算出されている。なお木造専用住宅は54.00年(回帰式、以下同様)、RC造専用住宅は56.76年、鉄骨造専用住宅は51.85年と構造種別にかかわらず平均寿命は50年以上と算出されている。

また共同住宅の平均寿命を見ると、木造共同住宅は43.74年、RC造共同住宅は45.17年、鉄骨造共同住宅は49.94年となっている。この結果だけ見ると専用住宅よりも共同住宅の平均寿命は短いが、対象建物となった共同住宅の70%程度は一般的なマンションではなく民間賃貸住宅や社宅だと考えられることから、マンションの大多数を占めるRC造共同住宅の平均寿命はもう少し長い可能性が高い。なおマンションについては複数の所有者の意見が一致しないと取り壊しや建て替えが行われない※1ため、仮に大地震などによる構造的な被害が出てもなかなか建て替えが進まない。そのためマンションの平均寿命は専用住宅などに比べて長くなる可能性が高いが、マンションの取り壊しは最近ようやく始まった状況なのでデータが少なく、詳細な分析はこれからであろう。

また2005年と1997年の平均寿命を比較すると専用住宅で20%、木造専用住宅で19%、RC造専用住宅は10%、鉄骨造専用住宅は44%程度の延びが確認されている。この結果では構造種別によって延びの傾向がかなり違う結果となっているが、分析対象の条件をそろえるために東京・大阪・名古屋などの大都市が含まれていないことが大きく影響していると考えられる※2。地域差による平均寿命の延びの差を除いても1997年と2005年の調査結果を見る限り、1997年よりも2005年の方が平均寿命が延びていることは間違いないと考えられる。

以上の研究成果の踏まえた要点は3つある。1つ目は共同住宅の平均寿命は未だ把握しきれていないこと、2つ目は住宅の平均寿命は近年50年程度であること、そして3つ目は平均寿命は延びていること、である。

すでに社会問題にもなっている共同住宅の取り壊しと建て替えの実態であるが、今後1960年代以降急激に建てられたマンションそして公団住宅をどう取り扱うかが緊急の課題となる。しかも前述したように共同住宅に住む大多数が建て替えを望んでいてもなかなか実行できない状況であることから、社会的耐用年数と寿命の乖離があると考えられる。この乖離は建物が廃墟となっている期間が長い状況を示すため、今後ストックの長寿命化と有効活用を目指すためには社会的耐用年数を延ばすこととともに、寿命との乖離を少なくすることが重要である。

共同住宅に比べて専用住宅は個人の自由になるので社会的耐用年数と寿命の乖離は少ないと考えられる。なぜなら専用住宅は居住者の住宅に対する意識や行動が共同住宅より増改築や建て替えなどによって具体的に表現されるため、耐用年数の問題点や改善点もより的確に把握できるはずである。そこで住宅の寿命の実態を的確に把握するためには、まずは専用住宅の平均寿命を知ることが不可欠であろう。そこで今後は専用住宅、その中でも日本の代表的な専用住宅である木造専用住宅を中心に寿命を考察していきたい。なお住宅の寿命が50年程度であること、平均寿命が延びていることについても木造専用住宅を例として詳しく分析したい。

※1 基本的には取り壊しには全員の同意、建て替えには4/5以上の合意が必要
※2 大都市では小規模な鉄骨造建物が頻繁に取り壊されている可能性が高いと考察されている

<参考文献>
1.「1997年と2005年における家屋の寿命推計」小松幸夫/日本建築学会計画系論文集/632号/pp.2197-2205/2008

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