住宅のストックの推移

住宅のストックの推移

ここでは日本の住宅ストックの現状と、その推移について確認をしたい。まずは5年毎に行われる「住宅・土地統計調査」の最新情報(2003年時点)を文献1より引用する。

★総住宅数は5389万戸、5年間で7.3%増加
平成15年の総住宅数は5389万戸、総世帯数は4726万世帯となっています。平成10年調査の結果と比べ、総住宅数は364万戸(7.3%)、総世帯数は290万世帯(6.5%)、それぞれ増加しました。また、1世帯当たりの住宅数は1.14戸と平成10年の1.13戸を上回りました。
第1回調査が行われた昭和23年の総住宅数は1391万戸でしたので、その後の55年間で約3.9倍に増えたことになります。
戦後の住宅不足を解消するため、「公庫・公団・公営住宅」のいわゆる住宅政策の3本柱が昭和30年までに整えられ、住宅建設が進められてきました。その結果、昭和48年にすべての都道府県において住宅数が世帯数を上回りました。その後は、住宅建設五箇年計画において、ゆとりある住生活の実現や住環境の着実な改善が進められ、平成18年には、少子高齢社会、本格的な人口・世帯減少社会の到来を目前に控え、現在と将来の国民の豊かな住生活を実現するため、住生活基本法が制定されました。

★空き家は、引き続き拡大
少子高齢化が進み、人口減少社会が現実のものとなりつつある中、総住宅戸数が総世帯数を上回り、 空き家の増加が続いています。
空き家率(総住宅数に占める空き家の割合)は昭和38年以降でみると、一貫して上昇を続け、平成10年に初めて1割を超え、11.5%(576万戸)となり、平成15年には12.2%(659万戸)となりました。

★共同住宅の割合は、引き続き拡大
住宅の建て方別割合の推移をみると、一戸建の割合が昭和53年の65.1%から平成15年の56.5%へ縮小し、また、長屋建も9.6%から3.2%へと大きく縮小しています。これとは反対に、マンションなどの共同住宅は、24.7%から40.0%と大幅な増加となり、住宅の集合化が引き続き進んでいることがわかります。

2008年度の調査結果におけるデータ及び詳細な分析はまだ発表されていないため、2003年度の調査結果を確認すると、住宅総数4686万戸のうち一戸建が2649万戸(約57%)、共同住宅が1873万戸(約40%)を占めている。また一戸建では木造・防火木造が約93%を占めるが、共同住宅では非木造が約84%を占めている(文献2)。近年は共同住宅の割合とともに非木造の割合が増える傾向が見られるものの、木造専用住宅は日本の住宅ストックの約半数を占めていることから、今でも木造専用住宅が日本の代表的な住宅であるといえるだろう。

さらに詳しく住宅ストックの推移を見ていく。第2次世界大戦後直後の極度の住宅ストック不足とその状況を打破すべく打ち出された「公庫・公団・公営住宅」を中心とした住宅政策については前回も触れているが、その後の日本経済の立ち直りとともに住宅ストックの充実が図られる。1968年の調査では調査後初めて住宅総数が総世帯数を超えたが、その後も着実に住宅ストックを積み重ねていく。2003年には住宅総数が総世帯数を663万戸上回り、空き家数も659万戸(空き家率12.2%)まで一気に増加している(文献3)。2003年以降は景気の低迷により住宅着工数は一時期よりも減少しているものの、2008年は109万戸と現在でも100万戸を超える住宅が建設されていることから、空き家も増え続けていると考えられる。少なくとも数から見れば、現在の日本の住宅ストックは充足しているといえる。

一方これまで住宅の新築が中心だった住宅産業の今後の先行きは暗い。既に充足している住宅ストックに加えいつ回復するか分からない景気、そして高齢化・少子化による人口と世帯数の減少を考えると、新築住宅の減少は避けられない。近年の景気減少に伴い現在でも持ち家率の増加による経済効果を見込んだ積極的な住宅政策が行われているが、住宅ストック自体は既に充足しているのでその効果はあまり期待できない。また人口は2004年の1億2779万人を境に既に減少が始まり2030年には1億1522万人と約1260万人もの減少が予測されているが、総世帯数も2015年の約5060万世帯頃を境に減少し2030年には4880万世帯程度になると予測されている(文献4)。今後の総世帯数の増加を考慮しても既に存在する住宅ストック数を維持するだけでほぼ十分まかなえるので、仮に景気が上向いても今後新築住宅の着工数が再び増加する可能性は低い。今後は新築住宅の着工数を毎年100万戸以上維持するのは難しくなるだろう。

既に社会問題にもなっているように、新築住宅の着工数は今後確実に減少に向かう。もちろん住宅の充足とは単純にストック数の問題ではなく、質が低い住宅ストックは今後も継続的に更新する必要がある。また一定以上の空き家数は、転勤などによる住み替えや中古住宅の流通のために必要である。例えどんな経済・社会状況でも新しい家が欲しいという人はいるだろう。そのため今後新築住宅の建設が全く無くなるとは考えにくいが、経済的・社会的にも既存ストックの活用がこれまで以上に要求されるのは間違いない。そして新築の建設が中心だった住宅産業は、ストックの活用を中心に産業構造を大きく転換する時期が来たのである。

<参考文献>
1.「平成20年住宅・土地統計調査のはなし」総務省統計局HP http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2008/hanashi/index.htm
2.「平成15年住宅・土地統計調査」総務省統計局HP http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2003/index.htm
3.「建築着工統計調査報告(平成20年計分)<報道発表資料>」国交省HP http://www.mlit.go.jp/report/press/joho04_hh_000062.html
4.「日本の将来推計人口(平成18年12月推計)」国立社会保障・人口問題研究所HP http://www.ipss.go.jp/
5.「日本の世帯数の将来推計(全国:2008年3月推計)」国立社会保障・人口問題研究所HP http://www.ipss.go.jp/