昨今の状況・非常事態宣言を受け、全国の大学も閉鎖や授業の延期が続いています。
そのため前橋工科大学建築学科では、新入生向けに各教員が「歓迎の挨拶」を大学の掲示板に掲載しています。
せっかくなので、私の「歓迎の挨拶」をここに残しておきます。
建築学科新入生の皆様
前橋工科大学の堤です。ご存じのように1年生担当です。
改めてご入学おめでとうございます。
最初に私の専門分野から紹介しますが、
実は少し複雑で、自分でもなかなか簡潔に説明することができません。
基本的に堤研究室では建物の長寿命化を目指し、
ソフトからハードまで、ミクロからマクロまで幅広い研究を行っています。
研究のポイントは建物だけでなく「ひと」や「とき」、
生活拠点である建物を大切に使い長寿命化を推進することで、
地域の持続可能性を実現するために様々な視点から研究を行います。
さて昨今の情勢は、皆さんにとってだけでなく私たち教員や大学にとっても
想像もしていなかった状況、まさに想定外の出来事にただただ驚いている状況です。
特に大学が長期的に使えない・入れない状況はこれまで経験がなく、
遠隔授業の件についても、急遽実施することになったので教員も分からないことだらけです。
そのため利用ソフトや手続方法については、確定するまでもうしばらくお待ちください。
※大学や教員からの連絡(大学のメールアドレス宛)は直ぐに確認できるよう設定してください。
この状況は建築・建設業界にとっても想定外であり、
極端な言い方をすれば、建設することが前提だった建築・建設業界は
本当に施設(の建設)が必要なのか?という根本的な「問い」に直面することになりました。
もちろん大学という機能やサービスは必要だ(だから皆さんは前工大に入学した)と思います。
しかし遠隔授業ができるなら、大学の建物(大学施設)は必要ないと考えることも出来るでしょう。
ではなぜ大学施設が必要なのか、どのように使うべきなのか、使えないときはどうするのか、
今まで想定外だった認識を考え直す良い機会だと思います。
私は現在、全国の地方自治体と公共施設全般を対象に、同様の「問い」に向き合っています。
しかし残念ながら、この「問い」に私一人では答えを出すことはできません。
まずは様々な専門家や技術者、その地域に住む・施設を使う多くの人と協力して、最善の「答え」を見つけ出す必要があります。
さらに「答え」を実現する方法を検討・提案し、行動しなければ「答え」にはたどり着きません。
どうすれば意見が違う人と協働し、どうやって正解がない方向性を統一し、どのように障壁を乗り越えるのか
これら「問い」に対する「答え」を実現するまでの一連の作業が、私の主な研究対象です。
正直言って、うまく行くことはあまりありません。政治的な理由で何回も実現直前に中止になりました。
でも本来は誰もが考えるべき「問い」であり、「答え」を実現することが難しいからこそ研究する意義があると思っています。
ぜひ皆さんも大学で一緒に、目の前にある「問い」の「答え」を見出し、自ら行動して実現させましょう。